カバーリングの考え方
カバーリング(covering)とは、「補完する」とか「代替する」「包括する」というような意味合いです。つまり、ガーデニングのあらゆる構成要素が意味を持ち、バランスを整えるためのテクニックと言えばいいでしょうか。
ごく狭い意味では「グラウンドカバー」とか「隣家からの目隠しのために植栽すること」も当てはまりますが、ここでは考え方・概念をお伝えしたいと思います。
おそらくどこのガーデニングノウハウ本にもこの概念は載っていないと思います。
ガーデンワークのどんな場面にもちょっとの工夫で役立つ重要かつ感性指向のテクニックなのです。
スタイリングの基本
すべての基本は『三角形』です。寄せ植えを作るとき、苗の配置のし方は「三角形」ですし、高低差をつける場合も「高いもの」「中くらいのもの」「這うもの」といった高さの三角形を作っていくわけです。

寄せ植えの場合は苗の数を奇数にすると三角形が作りやすいですが、偶数だとしても、また、苗の数がたくさんになっても、配置を均等でなくずらしたり、小物やオーナメント、トレリスといった植物以外のオブジェクトでポイントを作ってやることにより、三角形の頂点を加減できるようになります。右の写真は講習会で生徒さんのつくったクリスマスの寄せ植えですが、植物以外の質感の異なる素材を空いている空間に配して全体の安定感を得ています。
つまり、その空間を構成する要素全体で連続的な三角形を作っていけばいいというわけです。
こういった『情景を安定させる工夫』こそがカバーリングの大原則なのです。
庭をデザインする時もこの延長で考えればいいわけです。
まず、フォーカルポイントとなるオブジェクト、例えばシンボルツリーやアーチパーゴラなどを配置したら、そこを基点に三角形の頂点になる場所にポイントとなる樹木や構造物を配していけば、全体に安定感のあるすっきりしたデザインができるでしょう。「借景(しゃっけい)」なども一種のカバーリングテクニックと言えます。要は、オブジェクト同士が人間の動線から見て重ならないようにすることが三角形を保つことで可能になるわけです。そして全体を見渡したときに自分自身がなにげなく安心感を得ていれば、空間全体がうまく「カバーできた」ということができます。
現状の打破と変化への対応
もうできあがっててしまっているものや変化していくものに対しての対応も「カバーリング」です。
例えば下の写真の例では、高さ2mのカイズカイブキの生垣が外周全体に植えられ、雑然と茂った草花とあいまってとても暗く、圧迫感を感じていました。
<施工前>![]() |
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<施工後>![]() |
雰囲気を明るくしかも明確に歩ける庭の意識を起こさせるために、庭の入り口にアーチをかけ延長で生垣に沿って段違いのラティスパーティションを設置しました。
このように現状に大きなダメージを与えることなく質感の異なるオブジェクトを配することで故意に非連続性を表現し、雰囲気を好転させるやり方もカバーリング技法と言えます。
時間の経過とともに景観が変化する場合は、その場所に別のオブジェクトをあてがっておくという方法があります。
たとえば、生垣の一部だけが枯れた場合、そこを抜き取りその幅分だけ生垣より少し高いラティスを立てるとか、オベリスクを立てて生垣と葉色の異なるツルものを這わせてみるのもいいでしょう。
また、苗が育つまでの間や冬落葉してぽっかり空間が空いてしまう場所には一時的にコンテナ植えや手作りクラフトを高低差つけて飾るのが上策でしょう。
感覚のケア
カバーリングのコツはT・P・Oに応じて割り切って行うことです。「一時見栄えをよくすればいい」とか「あるものを使ってやる」とか「2年ごとにやり直しする」など目的意識をはっきり持つことです。
しかし、これまで述べてきた“テクニック”には実は肝心なことが抜けています。カバーリングというのはバランスをとるために行うわけです。でもその結果、バランスがとれて満足するのは誰でしょう。それはカバーリングを行った本人です。他人が見たら「おかしい」と言うかもしれません。つまり、バランス感覚はあなた自身の基準によるということです。いい意味の自己満足です。
だから「これが正解で、あれは間違っている」という類のものではありません。人の言動に左右されるという性質の考え方ではないことをよく理解していただきたいのです。あなたの感覚を疑っては意味がありません。むしろ自分自身に「それでいいよ」とフォローしてやることが肝要なのです。